オウム病クラミジアはグラム陰性で、球状の偏性細胞型細菌です。
この菌は人獣共通のもので、鳥から人、その逆にも感染します。鳥を飼っている人は、この病気について知り、この病気にかからない方法を知っておかなければなりません。
鳥はどのようにしてオウム病にかかるのでしょうか?
この病原体は、病鳥の口腔や呼吸器分泌物、糞尿で大量に確認されます。鳩乳から検出されることもあります。
2014年2月、神奈川県川崎市内の社会福祉施設において5日間で4人が肺炎にかかり、検査の結果オウム病に感染していたことが明らかになりました。
同施設では薬品の使用はなく、水道水は上水のみで清掃や消毒は行き届いていましたが、近隣の工事に伴い前年の夏以降周辺に鳩が増え、換気扇の外フードの内側に巣を作って繁殖していました。換気扇の室外フード内の鳩の糞から、4人のオウム病患者の呼吸器検体から検出されたものと同じクラミジア菌が検出されました。通常それだけでは感染源との断定は難しいのですが、他に共通点がなく、潜伏期間であったとされる2月中旬には強風や積雪等の悪天候のため鳩がフード内に避難していた可能性もあり、一部の換気扇の作動により多量の鳩の糞が室内に入り、その鳩糞の吸入により感染したのではないかと推察されました。
国内で多くみられるドバトのオウム病クラミジア保有率は20%と高く、鳩の糞害が問題になっています。同様の集団発生を防ぐため、ドバトの集まる場所では定期的な清掃を実施して感染防止に努めるとともに、清掃業者にも注意喚起をする必要があります。
病鳥が羽ばたくと、この病原体の粒子が煙霧体化します。
すると、その煙霧体を吸い込んだ鳥や人などに感染します。
この病原体は、吸入後およそ24時間で、肺、肺胞、心嚢で急速に増殖し感染します。
この病原体は、48時間以内に血液から検出されるようになり、感染後およそ72時間で排菌されるようになります。
これは、この病気は急速に広がっていく事を意味します。
この病原体が気道に入ると、肝臓や脾臓などの隣接した臓器にまで広がります。
経口感染の場合は症状が表れないことが多く、慢性の無兆候性疾患となることもあります。
セキセイインコなどでは、卵を通して感染した例もあります。
オカメインコはキャリアなりやすく、糞便にオウム病クラミジア菌を1年以上排菌することもあります。
鳥がオウム病にかかると、どのような症状になるでしょう?
病原体の株によって違いがあるので、症状は非常に軽い場合もあれば、重篤な場合もあります。さらに鳥の種類によっても異なります。
鳥の場合は、胃腸と呼吸に症状が見られます。オウム類には、呼吸困難、眼鼻分泌物、食欲不振、鮮緑色の糞便、逆流、嘔吐などの症状が見られます。特にオカメインコでは神経症状が見られ、頭部、体部、頸部が振戦あるいは捻転することがあります。ボタンインコなどでは、症状が全く見られないまま死亡することもあります。
感染から兆候が表れるまでには、鳥の場合3日から1ヵ月くらいかかります。しかし、認識できる危険因子もなく兆候を示す鳥もいます。これは、その期間保菌状態であった可能性が高いです。
オウム病はどのように診断すれば良いのでしょうか?
クラミジア病原体を検出する為の最も速くて良い方法は、PCR法(ポリメラーゼ連鎖反応法)です。この信憑性が高く、感度の高い検査は、培養されている生きた病原体を必要とはしません。クラミジアの培養は非常に難しいものです。クラミジアは人獣共通で感染する病原体なので、全て研究室でも培養出来るわけではないのです。有効な血清検査はあるものの、それらには解釈上の問題があります。CBC(完全血球算定)とプロファイル血液検査、およびX線に基づく臨床像が一致すれば、臨床医は病鳥がオウム病を罹患していると診断するでしょう。X線画像では、肝臓や脾臓の腫大や、肺(肺炎)と気嚢(air sacculitisまたは気嚢の炎症)に変容が見られるかもしれません。
以上は、診断プロセスの第一段階となります。
その後臨床医はPCR検査の為に、中咽頭、排泄腔の糞便、血液を採取するでしょう。その採取物を使用してPCR検査を行い、鳥が健康であると確認することもできます。鳥類の獣医師の初診の際には、この検査を行うことが推奨されています。
上記のことから、良い飼い主になるには、検査を行ってオウム病クラミジア菌が陰性であるとわからない限り、他の鳥と接触を持たせるべきではないことがわかります。また、病原体は煙霧体化していることがあるので、量り売りの食料は購入しない方がよいでしょう。
この菌に対する従来の治療法は、ドキシサイクリンを45日間使用するものです。
治療期間が非常に長いのは、オウム病クラミジア病原体が、血流中の白血球の一種のマクロファージに潜伏している可能性があるからです。残念なことに、非複製周期に入ると、ドキシサイクリンはマクロファージ内の病原体に到達することが出来ません。
しかし、細胞分裂期は45日の治療期間内に少なくとも2回あり、この時に病原体がマクロファージから排出されるので、ドキシサイクリンは病原体を死滅させることができます。この治療後は再検査を行い、病気が完治し、保菌していないことを確認しなければなりません。この薬にはいくつかの形状があるので、獣医師と相談して選択してください。ドキシサイクリンは水に溶かして投与しますが、服用量は鳥の種によって異なります。ドクシサイクリンは、指定された種を油でコーティングして投与するか、口から直接投与できます。服用量は鳥の種によって異なります。
適応鳥種 | 薬用量 | 投与期間 | 投与経路 | 備考 |
---|---|---|---|---|
全鳥種 | 100mg/100mL | 45-60 日 | 飲水 | なし |
オウム類 | 1g/kg | 45-60 日 | 食餌 | ソフトフード |
ヒインコ | 10g/kg | 45-60日 | 食餌 | シード |
小型インコ・カナリア | 1g/kg | 45-60 日 | 食餌 | ソフトフード |
ゴシキセイガイインコ | 16mg/kg | 45-60 日 | ネクター | なし |
水鳥類 | 100mg/L | 45-60 日 | 飲水 | なし |
水鳥類 | 240ppm | 45 日 | 食餌 | なし |
水鳥類 | 100mg/kg | 45 日 | 経口 | なし |
オウム病は人間も罹患する人獣共通疾患なので、他の疾患にも増して用心しなければなりません。
人間では、潜伏後約5日〜14日で症状が現れますが、1ヵ月かかることもあります。概して特異な症状はなく、上気道の症状を伴う頭痛や筋痛、インフルエンザの様な症状があります。特に夜間は、高熱を伴ってリンパ節が腫張する傾向があります。病原体に対して適切な治療を行わないと、症状は悪化します。アジスロマイシンは人のオウム病治療によく使われるもので、効果の高い治療薬です。この病気は鳥にも人にも致命的なので、この疾患にかからないようにするために、我々は鳥の飼い主としてこの病気に対する知識を持つ事が重要です。
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